第55回日本文化塾 講演会
駆込み寺の社会史的意味─ アジールとは何か?
講師 | 夏目 琢史 氏(国士舘大学講師) |
日時 | 2018年11月17日(土) 14:00〜16:00(13:00開場) |
会場 | きゅりあん 4階 研修室 (品川区立総合区民会館) |
参加費 | 会員 1,000円 / 一般 1,200円 参加費・資料代として、当日会場にて申し受けます。 |
たとえ、犯罪人であってもそこへ入り込めば保護される空間――「アジール」。本講座では、かつて平泉澄、網野善彦、阿部謹也ら著名な歴史学者によって注目された「アジール」が、日本社会史のなかでどのような展開を遂げてきたのかについて概説します。苦しめられた人びとの行きつく先である「アジール」の歴史から、ふだんは歴史の表舞台にはあがらない人びとの姿にスポットライトをあててみたいと思います。
講師 夏目 琢史 氏 プロフィール/
1985年、静岡県出身。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。一橋大学附属図書館助教を経て、現在は国士舘大学文学部史学地理学科講師。公益財団法人德川記念財団特別研究員。主著に『近世の地方寺院と地域社会』(同成社、2015年)、『井伊直虎』(講談社現代新書、2016年)など。
参加された皆様の声
紅葉狩りに参加者を取られてしまったのか、たいへん空席が目立ちました。講師は、お若く文化塾らしい雰囲気をお持ちの、元気のよい方でしたね。熱弁を振るわれ。ついつい引き込まれました。打ち首にしようとした重罪人の首に東照大権現の彫りものがあって、処刑が中止になったというエピソードが面白かったです。ご使用のパワポも、ディズニー映画のようにきらきらが出るなど、楽しませていただきました。ただし、アジール論はなじみがなく、初歩的なところからご説明いただけたら、よかったと思います。AS
今回の講師は若くて研究熱心な方ですが、「アジール」というテーマについて、当初は「駆け込み寺」のことかと思っていましたが、もっと様々なケースが含まれるようですね。もともとなじみの薄い言葉なので、概念をもっと明確にし、分類をきちんとしないと私にはよく理解できなかったです。法治国家の現代先進国にはすでになくなったしきたりなのか。新興国ではどうなっているのかも聞いてみたいです。HN
単なる女性の駆け込み寺として東慶寺・満徳寺の名前しか知りませんでしたが、今回のセミナーで「アジール」という言葉の意味と深さを初めて知りました。いくつになっても、新しいことを知るということは嬉しい限りです。講師の夏目先生のお話も歯切れよくわかりやすかったと思いました。SK
文化塾で、知的な刺激を受けると、その刺激がその後見聞きする物事の理解を深めてくれます。多少混乱して受けとっても、いつか、何かに光を照らしてくれます。今回、アジールという切り口で歴史の時代を俯瞰的に縦断した視点が新鮮で面白かったです。アジールを作り出す(大抵の場合宗教寺院の)勢力と時の権力との力関係がどうなったいるのかな、とも思いました。どこかの大臣のように、何回失言しても護られる人と一度の失言で失脚する人がいるように、お寺なら、どこでも治外法権があったわけではないのでしょうか。NK
講師はNHKの大河ドラマ「井伊直虎」の制作にも関わられ、今回は龍潭寺や東慶寺の話かと勝手に思い気楽に臨んだが、予想に反し講演は「日本史の中のアジール」とも言うべく本格的で堅いものだった。内容はアジールの多様な姿を、古代から近世までお寺や神社はもちろん伝説や義賊までを視野に入れ、多くの具体例を挙げ紹介され興味深いものだった。殊に結語部分の、アジールは中世だけでなくどんな時代にも見られ、逃亡者だけではなく一般の民衆も必要としたとの話は新鮮だった。HO